実際に働いてみてわかった日本医療の問題点【後編】

実際に医者として働いてみると
「日本の医療っておかしくないだろうか?」
って思う機会がたくさんあります。
僕はまだ医者になって2年目ですが、すでにたくさんの問題点が医療にあると思っています。

今回は以前書いた下の記事の続きになります。

個人的な意見なのでまあこういう意見もある程度に読んでみてください。
あと少し長いです。

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この記事の内容

前回も書きましたが今回の記事で取り上げているテーマが下の6つです。

  • やりとりが手紙 or FAX
  • そもそも病院が利益を追求しにくい。
  • 医師の診療科、地域の偏り
  • 厳しい労働時間
  • 医療訴訟の問題
  • 破綻している医療保険制度

今回は下の2つに関して書いていきます。

医療訴訟の問題

これは最近のことでもありませんがYahoo!ニュースなどを見ていると医療訴訟のニュースをしばしば目にします。

医療訴訟の内容は様々で、明らかに病院の対応に問題がある事件もあれば、手術のミスなどもあるようです。

医療訴訟で有罪となった場合かなり賠償金を払うことになります。そのためほとんどの医師は医師賠償責任保険というものに入っています。(僕も入っています。)まあいわゆる自動車賠償責任保険のようなものですね。

医療訴訟の背景

最近ではいろいろな疾患ごとにガイドラインが作られており、これに則って医療を行わなくてはいけないルールになっています。そしてガイドラインから外れた医療を行ってしまうと訴訟されるという流れになっていると思います。
ガイドラインの一部はネット上でも検索すると閲覧できるため患者さんが正しいことをされているか確認することができます。

つまりネット上で自分が正しい医療をされたかどうか確認することができます。
ガイドラインだけでなく、他にもたくさんの医療に関する情報をネット上で見ることができるため医療訴訟なども起こりやすくなっているのかなと思います。

もちろん間違ったことは訴訟すべきだが…

もちろん何か間違ったことをされた時に訴訟するのは当然のことだと思いますが、これが厳しくなってしまってはなかなか医療も発展しなんじゃないかなと思います。

もちろん医療ミスは起きてはいけないものですが人間が行なっている行為である以上、医療ミスは起きてしまうものだと思います。

誰もやりたいと思ってミスをしているわけではありません。
一つのミスによって患者さんの命が失われてしまうことありますが、そこで訴訟に発展してしまい、その医師が救うはずだった他の患者さんが救われなくなってしまうのもどうなのかなと思ってしまいます。

またミスを恐れてしまっては若手の医師もなかなか育たなくなってしまいます。
経験が少ない若手の方がもちろんミスは多いはずです。しかしだからと言ってベテランが全てのことをやって若手が経験する機会を奪ってしまっては、将来の医療が成り立たなくなってしまいますし、ベテランの勤務が大変なことになってしまいます。

破綻している医療保険制度

これは医療の問題というよりは日本の問題ですが、みなさん日本の医療保険制度に関してはどう思っていますか?
というかそもそもどういう制度になっているか知っていますか?

日本の医療保険制度の仕組み

基本的には下記の厚生労働省のホームページにあるようになっています。

厚生労働省 医療費の自己負担https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-37.html

つまり基本的に保険に入っていると自己負担は

未就学児:2割
6歳〜69歳:3割
70歳〜74歳:2割(現役並み所得がある人は除く)
75歳〜:1割(現役並み所得がある人は除く)

そして1ヶ月の医療費がある一定以上を超えると免除される高額療養費制度がある。
このようになっています。

若者が高齢者を支える保険医療

この制度どうでしょうか?

よく言われていることですが、あまり医療費を使わない若い人からはたくさんお金を集めて、高齢者の医療費に充てるという制度です。

年金で暮らすことになる高齢者にとってはもちろんなくてはならない制度だと思います。
何か病気になった時の医療費はかなりの負担になってしまいます。
歳を取ってからのこの制度の恩恵を受けるために今まで社会保険料を払ってきたんだという人もいるでしょう。

でも、どう考えても少数の若者で多数の高齢者を支えるのは無理ですよね。

ただこの制度が変わることは期待できません。

高齢者からお金をたくさん集める制度を始めようとする政党は選挙で当選しないからです。
多数決の選挙で少数の若者の未来のための制度を始めようとしても落選します。

高齢者の医療費も3割にしますという政治家に高齢者は投票しないですよね。
誰しも自分の負担が増えるのは嫌です。

そもそも保険とは?

保険とは起きて欲しくないものに対してお金をかけるものであり、人々がそれが起きないように努力することで成り立つ制度である。
例えば自動車保険であれば加入者は事故を起こさないように努力する必要がある。
そうしなければ保険は成り立たない。

これは以前、メドレーという会社の豊田先生の講演会で聞いて「確かに!」と思った部分です。

では医療保険はどうでしょうか。

もちろん病気にならないように努力している人もたくさんいます。
しかしそれと同時に暴飲暴食する人や喫煙する人がいるのも事実です。

車両保険をかけてわざと事故を起こすのは保険金詐欺です。
では医療保険をかけてわざと病気になるのはどうなのでしょうか。
個人的には一緒だと思います。

つまり国民皆保険というのはそもそも保険として不適切なわけです。
ただ、だからと言って国民皆保険はダメというのも倫理的にどうなのかという話なので難しい問題ですよね。

まとめ

いろいろ書きましたがあくまで個人的な意見です。

医療訴訟は必要なものです。
明らかにおかしい医療を行っている病院もたくさんあります。

国民皆保険も何かあったときに全員が医療を受けられるという大事な制度です。
これがないと「この人は保険がないから救急搬送しません。」ということも起こるかもしれません。

どれも必要な制度ですが、改善するべきことも山のようにあります。
医療の分野はなかなか他の分野の専門家が入りづらいということも関係しているかもしれません。
また、医療を営利目的に行うことはいかがなものかという考えもあるかもしれません。
ただどうしても自分を犠牲に他人を救うという考え方だけでは成長も遅くなってしまいます。
やっぱりビジネス的な要素があった方が発展するはずです。

先ほども書いた豊田先生の講演で

医療は目的(患者さんの病気が治る)というところに報酬があるのではなく、その過程(検査)に報酬が支払われるシステムである。
だから病院は利益を求めるために無駄な検査を追加し、そこに関わっている医療職の仕事量も増えてしまう。医療者の労働時間の問題はこのシステムであれば改善しない。

このようなお話をされていました。

日本の医療の発展のためにもまずは制度が少しでもいい方向に傾いてくれるといいですね。

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