【理論的に考える】ルート(末梢静脈路)の取り方のコツ

M.A

研修医や看護師になると必ずできなくてはいけない技術の一つがルート(末梢静脈路)確保です。そして多くの人が最初はなかなかうまくいかなくて悩んでしまうポイントでもあると思います。
ルート確保は基本的な技術なので最初に簡単にやり方だけを教わってその後は自己流でなんとなくやっているという人も多い技術じゃないかなと思います。

僕も最初はなんとなくやっていましたが腫瘍内科と麻酔科の研修で細かいポイントまで教えて頂き、かなり上手になった自信があります。

個人的に一番重要なポイントはやはりタイトルにも書いたように、理論的に考えてルートを取ることだと思います。
たまにこのやり方では流石に失敗するだろというやり方をしている人も見かけます。

今回の記事では失敗を極力減らせるように、ルート(末梢静脈路)の取り方に関して基本から細かいコツまで詳しく解説しています。あくまで個人的な方法論ですが参考にしてみて下さい。ルートの取り方に関して何かわかることがきっとあると思います!
(かなり長い記事(5000字程度)です。時間のない人は駆血と穿刺の重要のところだけでも読んでみてください!)

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しっかり準備

針と駆血帯だけ持ってきて「点滴取りますね」といってもただ刺すだけになってしまいます。これでは傷害罪ですね。まず重要なのが準備です。とはいえ特にポイントとなるような部分もあまりありません。

必要なものは

  • 駆血帯
  • 消毒用のアルコール綿など
  • 手袋
  • 針の枕になるテープ
  • 固定用テープ
  • 輸液とそこから繋ぐもの
  • (採血もする場合はシリンジ)

まあこのくらいでしょうか。

あまり手技に自信がないうちは血液が溢れてしまったときのために何か下に敷くものもあるといいかもしれません。(特に採血も同時に行う場合です。)

医者はあまり点滴の準備をする機会がないかもしれませんが、輸液セットの組み立てくらいは自分でできるようになるといいですね。ただ組み立てのルールは病院によって違うと思います。
輸液セットの組み立てで唯一、重要なポイントは造影CTをとる予定があるか否かという点だと思います。造影CTをとる場合は耐圧チューブが必要ですね。

ルートの針に関しては太い方から18G、20G、22G、24Gなどシチュエーションによって異なってくると思います。造影CTは20Gだったりしますね。ポイントは径が大きければ大きいほど急速に輸液できるという点なので目的に応じて選んでみてください。

基本的なことですが、消毒でアルコールが使えるかどうか確認しましょうね。
また固定のテープ類もしっかり準備しましょう。
採血も同時にする場合はシリンジも忘れずに。

まずは駆血から。

準備ができたら駆血ですね。駆血してこれから刺す血管を選びます。
採血でも駆血はしますが、ここにはひとつ重要なポイントがあります。

駆血とは?

まず、みなさん駆血に関してどう考えていますか?
とりあえず縛っていますという人が多くないでしょうか?

では「どのくらいの強さで駆血帯を縛ったらいいか」という質問には答えられるでしょうか?
正直この質問に答えられる人は少ないんじゃないかと思います。
とりあえずきつめにと答える人が多いと思います。

でもこの質問にははっきりとした答えがあります。

正解は…

静脈圧以上、動脈圧以下です。

だからなんだと思う人が多いかもしれませんがここが駆血の重要なポイントです。

例えば救急外来で血圧が60mmHgしかない人に対してきつく駆血したらどうなるでしょうか?
この場合、動脈も塞いでしまいただ腕に血流が行かないだけです。つまり静脈は見えるようになりません。

そもそも駆血の目的は何でしょうか?

それは駆血帯よりも末梢に血液を貯めて、静脈を拡張し、静脈を見やすくすることです。
つまり上の例のように血圧が低い人に対してただ駆血をしても動脈からの血流が行かないため血液は溜まらず、静脈は見えるようになりません。

そのため動脈圧よりは低い圧で駆血をする必要があります。
しかし、だからといって緩めすぎると静脈に血液が溜まらず、ただ心臓に血液が戻っていくため静脈は見えません。

ではどのように駆血したら良いのでしょうか。

理想の駆血

理想の駆血はまずかなりきつく、動脈も触れないくらいの強さで駆血します。
そしてこの段階で患者さんの橈骨動脈を触れてみます。

ここで動脈の拍動を触れた場合はきつく縛っているため静脈圧は超えていると考え、静脈圧以上、動脈圧以下で駆血できていると考えます。

一方で橈骨動脈の拍動を触れない場合は動脈圧以上で駆血していると考えられます。
そのためここから橈骨動脈を触れながら徐々に駆血帯を緩めていきます。
そして橈骨動脈を触れるようになったポイントが静脈圧以上、動脈圧以下で駆血できている強さになります。

この強さ駆血できていれば、駆血によって得られる最高の状態であると言えるはずです。

ただこの手技はどうしても時間がかかってしまうという問題点があります。
基本的に慣れてきたらその人の血圧を意識して駆血を行うという点だけでも意識するといいと思います。

いよいよ穿刺です。

駆血が終わると消毒して穿刺となります。

血管の選び方

まずは血管の選び方です。

腕に関しては自分が取れると思った腕を選ぶのが重要ですが、患者さんも入院中にいろいろと利き手は使う(食事など)ので、できれば利き手ではない方に取った方が優しいと思います。

さらに神経があると言われる橈側遠位はやめるようにしましょう。

また「この人難しい」と思った時は基本的に末梢側から刺しましょう。これは失敗してしまったときに失敗した点より中枢側は刺しても大丈夫だからです。中枢側で一度失敗してしまうと末梢側で再びラインをとった際にその失敗した点から漏出してしまうリスクとなってしまいます。
また肘の近くにラインを取ってしまうと肘を曲げたときに閉塞してしまいます。

以上のことを考えた上で血管を選んでいきます。
血管はしっかりと触れる血管を選ぶようにしてください。
青く見えている血管を選んでしまいたくなる時がありますが、一番重要なのはしっかりと血管が拡張していることです。よく触れるものを選び、どうしても触れるものがない時は視覚を頼りましょう。

どうしても見えない場合は血管がよくある場所を指します。(最終手段です)
例えば多くの人は手背の指と指の間に血管があります。(自分の手を見てみてください。)
どうしても取れない時はここも選択肢になります(痛いです)。

消毒は一応中枢から末梢の向きで消毒すると血液を末梢側に戻せるのでいいと言われていますが、これは正直大差ないと思います。理想の駆血ができていれば持続的に動脈から血液が来るため消毒の手技の影響はわずかと考えられます。

あとよく消毒すると場所を忘れてしまうと悩む人がいると思います。
特に血管が見えにくい人は触って、消毒しての繰り返しになってしまうことがあります。
こういう時は患者さんは少し痛いですが爪を立てて痕をつけるといいです。消毒しても痕は残るので迷いません。

針の基本情報&手の使い方

針の構造ですが、針は金属の内筒と留置する外筒に分かれています。

サーフロー針

ここから先は右利きのやり方を書いているので左利きは反対です。

最初に内筒と外筒の滑りを一度確認しておきましょう。少し滑りが良くないものもあります。
まず右手の針の持ち方ですが、親指と中指で挟むようにして持ちます。人差し指はフリーにします。(人差し指は後で使います。)

点滴の針の持ち方

持つときの注意点ですが、必ず逆血がきたときに確認できるように持ちましょう。
よく手が重なってしまって逆血が見えていない人がいますが、それだと流石にうまくいかないので調整してみてください。

また針によって逆血が来る場所も違うので注意してくださいね。
外筒と内筒の隙間が赤くなるものもあれば、針の根元から血液が出てくるタイプがあります。

点滴の針の持ち方解説

次に左手に関してですが左手はしっかりと血管、皮膚にテンションをかけて血管が動かないようにしてください。刺すときにこの左手がないと血管が逃げてしまいます。

穿刺から逆血まで

まず静脈は浅いので、針はあまり角度は付けないようにします。
表皮を貫くときに一番痛みを感じるため、表皮はできるだけ素早く貫きます。
そしてそのまま逆血が来るまで針を進めます。
この間押さえている左手はしっかり離さないようにします。

逆血は内筒と外筒の隙間に来るタイプと針の後ろからくるタイプがあるのでここはしっかり確認しておきましょう。

ちなみに針を進めても逆血が来ない場合ももちろんあります。
これは針の角度が浅すぎた場合、左右にずれてしまった場合が考えられます。
ある程度進めても逆血が来ない場合は一度ギリギリ針が抜けないところまで針を戻し、角度や方向を変えて再び進めて逆血が来るところを探します。この場合はまだ血管に刺さっていないため一度左手を離して血管の位置を確認しても大丈夫です。
腫れてきてしまった場合や痛みが強い場合は針を抜いてしっかり圧迫しましょう。

逆血が来たらできるだけ針を寝かせてさらに3mm程度進めます。

3mm程度進める理由は逆血が来た段階ではまだ内筒の一部しか血管に入っていない可能性があるからです。

逆血が来た段階ではまだ針の先端の一部しか入っていないので、上の絵の状態で外筒を進めても入るはずがありません。(たまに入ることはありますが…)

そして針を3mm程度進めた段階でもまだ逆血が来ていることを確認しましょう。

ここで3mm進めたことで逆血が来なくなってしまう場合があります。
これは内筒が血管壁を貫いてしまった場合です。

この場合はそのまま針を引いてきます。逆血が最初に来ていた場合はどこかで再び逆血があるはずです。(既に針の根本に溜まっている血液が再び増え始めます。)
逆血が来たところで次に進みます。

外筒の進め方:一番重要!

ここからがよく間違っている人が多いポイントですが、血管を押さえている左手は使わずに空いている右手の人差し指で外筒を5mm程度押し込みましょう。
写真のように持って人差し指だけで押します。
外筒にはちゃんと押すところが付いているので確認してみてください。

ルートの外筒の進め方

この片手で外筒を押す手技は慣れていないと難しいのでできない人は練習しておきましょう。内筒は動かさずに外筒だけ押し込みます。よく内筒の針を引いてしまうことがあります。
写真のように内筒の針の先端が隠れるような状態に持っていきます。

ルートの外筒が少し進んだ写真

ここでよく見るのは逆血が来た時点で左手を離して左手で外筒を進めている人です。
このやり方だと、左手を離すことによってここまで引っ張っていた血管が動いてしまうためせっかく入っていた針が抜けてしまいます。
運が良ければ大丈夫ですが、失敗の可能性が高くなってしまいます。

右手だけで抵抗なく5mm程度外筒を進めることができれば外筒はしっかり血管内に入っていると考えられます。
ここまで来たら左手を離して外筒を進めてもいいですし、そのまま右手で内筒と外筒を押さえて同時に進めても大丈夫です。どちらのやり方でもいいので、外筒はしっかり根本まで押し込みましょう。外筒がしっかり進んでいるため内筒を一緒に進めても針で血管を貫くことはありません。(写真のような状態なので大丈夫ですよね。)

ルートの外筒の進め方

最後の仕上げ

しっかり外筒を進めることができたら次は内筒を抜きます。

ここで採血がある場合は少し難しくなります。

採血ありの場合

採血がある場合、駆血をしたまま内筒を抜くことになります。

当然ですが駆血をしたままなのでそのまま内筒を抜くと血が出てきて血まみれになってしまいます。(逆流防止弁が付いている針もあります。)

なのでしっかり針を抑えつつ、外筒の先端がある部分を押さえなくてはいけません。
よく刺入点の近くを押さえてしまうことがありますが、ここは外筒があるのでいくら押さえても無駄です。外筒の先端があるあたりを抑えるようにしましょう。

このように内筒を抜いたらシリンジを繋いで採血です。
採血が終わったら駆血帯を外し、再度外筒の先端がある部分を押さえてシリンジを外し、輸液セットを繋ぎます。

ここら辺の作業をしているときにとにかく外筒が抜けてしまわないように気を付けましょう。抜けてしまうと全てやり直しです。

輸液セットとのつなぎ目はしっかりと締めるようにしましょう。ここはかなり緩みがちです。

しっかりとつなぐことができたら滴下を確認します。
滴下が問題なければ固定に入ります。
まずは枕のテープを貼って、その後固定のテープを上から貼ります。ここは病院によってルールが違うと思うので病院のルールに合わせてください。

固定が終わると後は片付けて終了です。
針はしっかり針捨てに入れるようにしましょうね。

採血なしの場合

採血なしの場合は駆血帯を外し、外筒の先端部分を押さえて内筒を抜きます。
後は輸液セットを繋いで上と同じ流れになります。

まとめ

かなり細かく書きましたがルート確保は基本的な手技でありながら、なかなか細かいやり方まで教わらないポイントだと思います。
大事なのは駆血と外筒の進め方です。

正しいやり方をすることによって失敗はかなり減らすことができると思います。
ぜひこの記事を参考にしてルートの失敗を減らせるようにしてみてください。

文字がかなり多くなってしまい読みにくかったかもしれません。
何かわからないことがあったらコメント欄にでも書いてみてください。

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