大学院に入ったら申し込もう!学振と次世代挑戦的研究者育成プログラムについて

M.A

皆さんは大学院というものをどう思っていますか?大学院というのは一般的には修士号、博士号を取得することを目的としたプログラムです。医師であればそれなりに多くの先生が学位を取るために大学院に入学すると思いますし、医学部以外でも研究に興味を持っている人は大学院に入学すると思います。

そんな大学院ですが、日本では人数があまり増えていません。むしろ減っています。(参考は文部科学省のスライド)理由としては単純で就職にあまり意味がないと考えられることや、そもそも学生を長く続けていては生きていけないことがあります。僕自身も大学院に入学しましたが、今のワクチンの仕事などがなかったらかなり厳しい生活だったと思います。海外であれば大学院は給料をもらっていくところみたいなので日本とは大きく違います。

そんな日本の大学院ですが、最近は日本政府も力を入れる必要性を感じたのか2021年から次世代挑戦的研究者育成プログラムという大学院生を支援するプログラムが始まりました。今回の記事ではこちらの次世代挑戦的研究者育成プログラムと合わせて以前から存在していた学振(DC1、DC2)も合わせて簡単に解説したいと思います。大学院生になる人はこれらのプログラムは必ず申し込むべきなので詳しく知らない人はぜひ読んでみてください!

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大学院とお金についての個人的な感想

この章は簡単な前置き(少し長い)ですので学振や次世代挑戦的研究者育成プログラムの説明は次の章からになります。また、私は医師なので医学部についての話が中心になります。またこれらの意見はあくまで個人的な感想です。

大学院について皆さんはどのように思っていますか?将来入学を考えていますか?ただ、そもそも入学する意味はあるのでしょうか?

行きたくないのに大学院?

多くの大学に所属する医師は大学院に行くことになると思います。自主的に大学院に行きたいと思っている人もいると思いますが、私が周囲の人に話を聞いていると臨床をしたいのに医局の意向で行かなくてはいけないという先生もいるようです。

なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。これは研究をしたい人が少なく、研究を誰かにしてもらわなくては医局としての実績を示せなくなってしまうからだと考えられます。たださらに問題なのが、大学院に入学して研究するだけならいいのですが、最初の1年は臨床をするというような医局が存在しているのが事実です。臨床をしているにも関わらず学費を支払うというよくわからない状況になるわけです。これがいわゆる無給医という問題で以前ニュースにもなったと思います。

“無給医” 労基署が是正勧告「画期的な判断 改善の第一歩に」 | NHKニュース
【NHK】おととし、日本医科大学付属病院が、診療に従事させていた大学院生11人に、少なくとも10日以上、賃金を支払っていなかったと…

現在は無給という状況はなくっていると思いますが、それでも研究ではなく臨床をしている大学院生をしている先生がいるというのが事実だと思います。まあ将来的に教授になることを考えているのであれば実績は重要ですし本人が納得しているのであればこれはそこまで問題ではないかもしれません。

ただ、現在は市中病院でも専門医などは取れますし、以前ほど必ず医局に入局しなくてはいけないというような状況ではなくなってきていると思うので臨床一筋で研究をしたくない人は入局しない選択肢もありなのかもしれません。医局制度は良い点もあるので難しい問題ですね。

研究したいけど生きていけない

医学部ではこのように臨床をしながら大学院生という変わった境遇の人がいますが、他の学部は少ないと思います。他の学部であれば研究をしたいわけではない場合、就職だからですね。卒業しても大学と関わる医師という職業はやはり少し変わっているなと思います。

研究をしたくない人の話を書きましたが、世の中には私のように研究をしてみたいという人もいます。新卒で企業で研究するという人もいるかもしれませんが、博士号を持っている人を採用している企業もあるので研究に興味を持っている人の多くは博士号を取るのではないでしょうか。また好きな研究室を選び、その分野の偉大な先生のもとで研究する機会が得られるというのも大学院です。

そんな博士号ですが、大きな問題が27歳くらいまで学生でいなくてはいけないという点です。医師であっても4年間再び学生になります。27歳は大学卒業して就職した人であればもう5年間も働いていますし、医師であれば4年間研究に時間を費やして、働くことができないとなるとかなりの収入減になってしまします。

よほど研究に興味がない限りここまでして大学院に入学する人はいないのではないかと思います。医師ならアルバイトで稼げますし、中には大学で働いているよりも大学院生としてアルバイトをしている方が給料がもらえているという変わった先生もいるので問題ないかもしれません(大学病院の病棟担当などは給料が安いからですね)。ただこのように高い時給でアルバイトをできない人であれば27歳まで学費を払いながら生きていくことはできないはずです。

要は日本はある程度稼ぐ手段がない限り大学院生として生きていくことはできないわけです。海外はそこを理解しており大学院生に給料が出るところも多いようですが、日本はそうではありません。これでは日本の研究者はどんどん減っていってしまいます。

この問題に対して少しでも大学院生でも生きていけるようにしようというのが学振や次世代挑戦的研究者育成プログラムです。

大学院生として生きていくために

ここまで書いたように大学院生は基本的に学費を払い研究を行うため親からお金をもらったり、自分で稼ぐ手段を持っていない限りなるべきではないのが現状です。医師が大学院生として稼ぐ手段に関しては以前記事に簡単にまとめたので参考にしてみてください。

この記事でも紹介していますが、医師でなくても稼ぐ手段として今回紹介する学振(DC1、DC2)と次世代挑戦的研究者育成プロジェクトがあります。

学振について

学振は昔からある博士課程の研究者を支援するプロジェクトであり、DC1とDC2があります。細かいことは募集要項(こちら)を確認して欲しいですが、医師の博士であれば、1年で申し込むDC1と2年で申し込むDC2になります。申し込みは無料なので指導教官の許可があればこちらは誰しもが申し込むべき制度だと思います。特にDC1に関しては多くの大学院生が実績がない中での選抜になるため自己アピール力が試されます。

こちらの制度は毎月20万円(税金は引かれます)と研究費が最大150万円もらえます。年収240万円というのは学費のことも考えると決して多い額ではありませんが、ありがたいです。とは言え、税金を引いて年間200万円程度を、

  • 学費53万円程度(東京大学ホームページより)
  • 家賃が年間60万円程度(月5万円)
  • 光熱費が年間12万円程度(月1万円)
  • 多くの人が持つであろう携帯で5万円程度
  • 現実的かはわかりませんが食費を1日1500円程度で年間約55万円程度

と考えると最低限であろう生活をしていてもギリギリなので何か他の給料を得る手段が必要なのは間違いありません。

合格率はいずれも20%とかなり低いです。またもらえるのも選考の翌年からです。合格率が低いのでこれだけで大学院生として生きていくのはかなり厳しいですが、挑戦する価値はかなりあると思います。

応募書類はかなりの量を求められるのでしっかり早めに準備するのが重要となります。

私は2022年度のDC1に合格することができました。2022年度に変更となった点や私の書いた内容についてまとめたので応募を考えている人は是非参考にしてみてください。

次世代挑戦的研究者育成プロジェクト

こちらは2021年から始まった新しいプログラムです(公式ホームページはこちら)。こちらは大学ごとにさまざまなプログラムがあり一応目的としているところは少しずつ違いますが、全体としては博士課程の学生を支援し、日本の将来を担う学生を育てようというプログラムです。

こちらのプログラムは大学によって少しずつ違うかもしれませんが公募の資料には

  • 最低180万円、上限240万円の生活費の支給
  • 研究費も支給し一人当たり年間220万円の支給を下回らない

と書いてあります。要は月額15万円の給料と年間40万円以上の研究費が保障されています。大体ですが最低賃金でフルタイム働いたくらいの金額が支給されます(最低賃金時給980円の場合)。

こちらは学振よりもさらに低い金額となっており、幾つかのトランスファラブルスキルを身につけるための授業を受けることが必要となっています。倍率などは今年スタートなのでわかりませんが学振と同様の倍率になっていくことが考えられます。応募方法も大学により異なります。

学振よりも安い金額であり、税金も引かれるためこれだけではかなり厳しい生活となってしまうでしょう。これだけでは20代後半の時期をずっと最低賃金で過ごすというのは厳しいという人は多いはずです。博士研究者の育成にはまだまだ不十分ですがこういう制度が増えるのは良いことだと思います。

私はこちらも応募し学振に合格したため途中で辞退しました。内容についてまとめたので

今後の日本の研究は?

今後も日本の研究者はどんどん減っていくでしょう。博士課程はよほど興味がある研究テーマがない限り入る意味も薄いです。これまで2つのプログラムについて書きましたがこの最低限の給与をもらえる仕組みでさえ5人に1人しか合格しません。せめて生活保護くらいの金額を全員がもらえるような制度があってもいいのではないかと思います。

一部の企業では自社の社員が大学院に行くという仕組みを持っている企業もあるようです。このようなシステムだと学生は研究に集中できるのでいいですよね。

まとめ

今回は大学院生が給料を得る手段の一つであり学術振興会のDCと次世代挑戦的研究者育成プロジェクトについて書きました。それぞれ月額20万円、15万円の生活費がもらえるシステムです。倍率は低いですが、応募は無料なので博士課程に入学した人は必ず応募するようにしましょう。

ただここまで書いたように大学院生活は医師ならまだいですが、金銭的には厳しく、よほど興味を持っていない限りは行く意義は薄いと思います。よく考えて入学しましょう。

これらの他にも卓越大学院プログラムという経済的援助があるプログラムもあります。こちらに関してはこの記事にまとめているので読んでみてください!

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