TIVAと吸入麻酔の比較!

全身麻酔には主に2種類あり、完全静脈麻酔(TIVA)と吸入麻酔があります。
TIVAと吸入麻酔は何が違うのだろうか。麻酔科を研修するとこの悩みは絶対に出てくるはずです。
TIVAと吸入麻酔は好みによるところも多いようですが今まで学んだメリットデメリットについて書いてみようと思います。どれも先生から聞いた話なのでエビデンスは不明です。

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TIVAとは

TIVA(total intravenous anesthesia)日本語では完全静脈麻酔ですね。麻酔の3要素(鎮静、鎮痛、筋弛緩)を点滴のみで行う手法です。具体的には鎮静をプロポフォールやミダゾラム、鎮痛をレミフェンタニルやフェンタニルなど、筋弛緩をロクロニウムで行いますね。

TIVAのメリット

TIVAのメリットは

1:吐き気が少ない。
2:免疫抑制作用が少ないと言われている。
3:すっきり覚める。


まあこんなところでしょうか。

1に関しては麻酔ではPONVと呼ばれる術後の吐き気が問題になりますがこれが少ないと言われています。女性や若い人、耳鼻科や脳外科手術ではこちらが好まれるでしょうか。

2に関してですが麻酔には免疫抑制作用があると言われているようです。この免疫抑制作用によってせっかく悪性腫瘍を摘出しても麻酔にによって転移してしまったというようなことが起きてしまう可能性があるようです。なので先生によってはですが悪性腫瘍の手術ではTIVAを好むという先生もいるようです。

3はシンプルですが麻酔においては重要なポイントです。吸入麻酔よりも起きた時に落ち着いていることが多いみたいです。プロポフォールによる鎮静は気持ち良いみたいですね。マイケルジャクソンも使っていましたね。

TIVAのデメリット

TIVAのデメリットとしては

1:卵アレルギーで使えない
2:高価である
3:脳波モニタリングが必要
4:個人差が大きい(術中覚醒のリスク)
5:専用のシリンジポンプが必要

こんなところでしょうか。

1に関してはまあどんな薬にもあるアレルギーです。プロポフフォールは脂肪に溶かしているので白い薬ですね。

2に関してはまあ吸入麻酔と比較してですが1本1200円を大体1-2時間で1本使いますね。

3と4ですがTIVAによる鎮静では脳波をモニタリングして鎮静の程度を観察します。BISというモニターをよく使います。(40-60くらいがちょうど良いです)プロポフォールは脂肪に吸収されるため太っている人であれば効果が出るまでに時間がかかり薬を切った後も覚めるまでに時間がかかります。また肝代謝で個人差があるため脳波モニタリングが必要でそれを見ながら薬を調整します。吸入麻酔は経験的に濃度が決められておりモニタリングは不要です。

5に関してはもはや独占市場となっているので仕方ないでしょう。作っている会社はかなり儲かっているでしょうね。

吸入麻酔とは

吸入麻酔は麻酔の3要素の鎮静(と鎮痛も少し)を吸入麻酔薬で行います。

つまりプロポフォールの代わりにセボフルラン、イソフルラン、デスフルランを使います。鎮静と書きましたが少し鎮痛の効果もあるようですね。鎮痛、筋弛緩に関してはTIVAと同じです。急速導入という方法では最初にプロポフォールを使って眠ってから吸入麻酔に切り替えます。

吸入麻酔のメリット

吸入麻酔のメリットとしては

1:安い
2:維持が簡単
3:覚めるのが早い

こんなところだと思います。どれも書いたままです。セボフルランであれば1-2%、デスフルランであれば3%くらいにしておけば麻酔の維持が可能です。手術終了時に0%にすると比較的短時間で濃度が下がり覚醒します。
セボフルランには気管支拡張作用があるとも言われているため喘息がある人にはいいかもしれません。

とにかく麻酔管理において2と3は大きいですね。
あとは子供であれば先にセボフルランで導入すると点滴を取る必要がありません。(緩徐導入)小さい子供は基本的に吸入麻酔ですね。
さらに細かいことを書くと吸入麻酔は脳波の抑制が少ないため脳波をみる手術では測定中は吸入が良いみたいです。

吸入麻酔のデメリット

吸入麻酔のデメリットは

1:吐き気
2:免疫抑制
3:デスフルランは気道刺激性

まあここは結局TIVAに負けている点になります。はっきりとしたエビデンスはないようですがこのようなデメリットがあると言われています。というかTIVAのメリットは吸入麻酔のデメリットですね笑。
3に関してですがデスフルランは覚醒は早いですが気道刺激性があります。起きている時に吸えたものではありません。子供の緩徐導入では笑気とセボフルランを使ったりしますね。

結論

今回はTIVAと吸入麻酔の違い、メリットデメリットについて書いてみました。

どれもそこまでエビデンスのあるものではないので最終的には好みのようです。プロポフォールが肝臓で代謝されるからといって肝臓の手術でプロポフォールが使えないわけではないようです。個人的なイメージとしては吸入麻酔でいけるのであれば吸入麻酔を選択するというイメージです。先ほど書いた女性、若い人、耳鼻科、脳外科、悪性腫瘍手術ここら辺はTIVAでしょうか。ここまでの1ヶ月で体感ですが8割がTIVAでした。(ちなみに僕が消火器外科を研修した時の自科麻酔は全て吸入麻酔でした。)

結局は好みですが民間の病院であれば極力吸入麻酔を使うのではないでしょうか。結局お金は吸入麻酔の方が安いです。プロポフォールには専用のシリンジポンプが必要です。このシリンジポンプは年齢と体重で血中濃度、脳内の濃度を測定してくれます。いろんなモードがあってやり方は先生によってバラバラですね。とにかく静脈麻酔は高価なので経済のためにもできれば吸入麻酔を選択したいですね。

ちなみに両方組み合わせるやり方もありますね。
それぞれの使い方が重要ですね。

コメント

  1. […] 準備に関してですがまずこの手術は概ね4〜5時間くらいの手術となります。個人的にはTIVAで行うことが多い印象です。TIVAに関しては以前の記事(TIVA vs 吸入麻酔)を参照してくださいね。点滴はAライン1本Vライン2本です。この手術の体位は仰臥位で始まりロボット操作中はtrendelenburg位という仰臥位のまま足をあげて頭を下げる体位となります。腸管を頭側に保持するためだと思います。この体位とロボットが入ることにより術中に新たに点滴を取るのは困難なのであらかじめ上記のようにラインをとります。基本的にこの手術はロボットが大きいので手術が始まってからはなかなか体に触ることができません。しっかり準備が必要ですね。もう一つのポイントとしてこの手術は閉鎖神経領域を触るので筋弛緩が十分に効いていないと動いてしまいとても危険です。さらに気腹によるお腹の痛みを軽減するためにも持続で筋弛緩(ロクロニウム)を流します。持続の筋弛緩の目安は7γですね。50kgの人だと2.1mL/hr程度になります。ただこの目安だけでも心配なのでTOFモニターがある場合はこれをつけるべきです。手術の体位固定前につけるようにしましょう。つけ忘れた時は皺眉筋や咬筋でモニターします。TOFは0をキープしましょう。最初に体位の確認をされる先生もいます。その時は台を一番高くして頭を一番下げますね。 […]

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