抄読会で読んでみた論文と抄読会について【虫垂炎に対して手術か抗生剤か】

NEJM M.A
出典: The New England Journal of Medicineより

研修中の小児科で論文の抄読会の担当が回ってきました。
小児科で研修して自分で関わった症例に関して読んでみようとは思ったのですが、痙攣などは難しいしなーとか考えて色々検索していたところ、The New England Journal of Medicineの虫垂炎に対して手術か抗生剤かのランダム化比較試験について(A Randomized Trial Comparing Antibiotics with Appendectomy for Appendicitis)という論文が2020年10月に発表されていたのでこれを読んでみました。
この論文は18歳以上が対象なので小児科ではありませんが、虫垂炎は比較的小児科でよくみる疾患なのでこれを選びました。

The New England Journal of Medicineに関してはこちらhttps://www.nejm.org

今回の記事ではこの論文についてと研修医として抄読会を行う際の論文の選び方についてまとめています。

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論文の概要

この論文は虫垂炎に対して抗生剤加療か手術かというシンプルなテーマについて書かれています。
この比較に関してはいくつかの論文があり小児に関しては2020年7月にも論文がJAMA Pediatricsに体裁されているなど議論を呼んでいる分野でもあります。
今回の論文では生活の質に関してを評価しており、抗生剤加療でも手術と比較して生活の質は劣らず、抗生剤による加療を行うことで仕事への早期復帰が可能であると書かれています。
また糞石の有無に関しても比較されており、糞石を伴う症例では糞石を伴わない症例と比較して手術になるリスクや合併症を起こすリスクが高いと説明されています。

虫垂炎に関しての細かい点

虫垂炎といえば手術というような印象を持っている人も多いと思います。
しかし、このような研究が行われているように現状手術か抗菌薬かはっきりとした結論が出ていない分野でもあります。
虫垂炎の手術に関しては今回読んだ論文ではほとんどが腹腔鏡で行われておりかなり低侵襲な手術となっています。今回の論文でも仕事復帰まではもちろん抗菌薬には劣っていますが手術でもかなり早いと思いました。
抗菌薬に関しては海外の論文でもあり、日本とは少し抗菌薬のチョイスが違うとも思いました。(今回の論文ではertapenemやcefoxitinなどが書いてあり日本では使わないと思いました。)

虫垂炎は成人、小児の間では比較的頻度が高い疾患ではないでしょうか。
既往歴を聞くと盲腸を昔やったという人が結構います。僕も研修中に何度かみたことがあります。
国家試験的にもMcburney点の圧痛などが有名ですよね。
最初はお腹の中心が痛くてそこから左下腹部に痛みが限局するなどもよく聞く病歴です。

今回の論文を読んでみて

今回の論文の結論としては抗生剤におよる治療は手術と比較して患者さんの生活の質を下げることはない、また虫垂炎に対して糞石がない場合は抗生剤加療が良く、糞石がある場合は手術のほうが良いという論文でした。

この論文は臨床研究に基づいた論文であり何か実験を行ったわけではないので比較的読みやすいと思いました。疫学的な調査のみで構成されています。やはり症例数が多いためThe New England Journal of Medicineという有名雑誌に取り上げられているのだと思います。

抄読会に関して

研修医であれば抄読会に関わる機会は多いと思います。色々な診療科で経験するのではないでしょうか。
抄読会では一つの論文を読んで簡単にまとめて診療科の先生たちに内容を発表します。
読む論文に関しては事前に指定されることもあれば、自分の好きな論文を選ぶことができることもあります。
論文は全て英語で書かれており、読むだけでも一苦労という人は多いと思います。

僕は以前基礎研究に関する論文を抄読会で読んだことがありましたがこちらは難しすぎて結局よくわかりませんでした。
基礎研究の論文は色々な実験について知っていないと実験の結果の読み方がわかりません。
グラフも色々なものがあるためその知識も必要となってきます。

一方で臨床の論文は基本的にランダム化比較試験などが多く、言い方は少し変ですがただ比較しているだけでもあります。そのため結果もわかりやすくとても読みやすいと思います。
僕が今回読んだ論文も大まかな内容としては虫垂炎に対して抗生剤加療と手術を比較しただけの内容なのでとても読みやすかったです。

あまり基礎研究に馴染みのない人や、抄読会の経験がない人はぜひ臨床系の論文を読んでみることをおすすめします。
内容に興味がなかったとしてもかなりプレゼンしやすいので研究の手法で読む論文を選んでみるのがいいと思いました。

まとめ

今回は僕が抄読会で読んだ虫垂炎の論文についてと、慣れていないうちは臨床研究の論文を抄読会で発表するべきという内容について書きました。
虫垂炎はコモンな疾患で現在研修している小児科にも関係ある内容だったため個人的には面白かったです。
論文は大学院に入学するとたくさん関わることになるのでしっかり英語の勉強も進めて行かなくては行けないと思いました。

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