医師がドクターヘリに乗ってわかったこと

ドクターヘリの画像 M.A

救急といえばドクターヘリ!、そんな印象を持つ人も多いのではないでしょうか。
ドラマ「コードブルー」の影響もあり、多くの人がその存在について知るようになったと思います。
ただその一方でドクターヘリが実際にどのように活動しているか、どんなことを行っているかについて知っている人は少ないのではないかと思います。
今回は僕が救急科研修でドクターヘリに乗るという貴重な経験ができたためドクターヘリの実際の内容について紹介したいと思います。
ドクターヘリに興味がある人、今後救急に関わりたいと思っている人はぜひ一度読んでみてください。僕の研修病院での救急科研修についてはこの記事にまとめているのでこちらも興味がある人は読んでみてください。

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ドクターヘリの概要

ドクターヘリは基本的に医師、看護師、整備士、パイロットの4名が乗ります。そして席がもう1つありここにOJT(On-the-Job Training)としてもう1名が乗れるようになっています。僕は今回この席に乗せていただきました。席は下のようになっています。
ドクターヘリの目的としては患者さんと医師の接触を早くすること、高次医療機関がない地域でも高次医療機関への搬送を可能にすることなどがあります。
ドクターヘリの速度は230km/hくらいとのことでした。新幹線より少し遅いくらいでしょうか。

ドクターヘリ当番の1日

ドクターヘリ当番の1日ですが基本的には通常の業務にあたります。
当番の日は通常のPHSとともにドクターヘリ用のスマートフォンを持って仕事をします。
僕の研修病院ではドクターヘリの出動回数が1日平均約1回なのでずっとヘリコプターに乗っているというわけではありません。

朝は準備があります。
ドクターヘリ用の服に着替えて機内に必要な物品を運びます。
物品は薬品、書類、現場で使う機器などたくさんあります。
物品を運んだ後は無線の確認を行います。それぞれの席のヘッドホンとマイクがちゃんと作動するかの確認ですね。ヘリコプターの中はうるさいのでお互いの会話は聞こえません。ヘッドホンとマイクで会話します。

無線の確認の後はその日のドクターヘリのメンバーと運行管理を行うCSの方とミーティングがあり、その日の気候や日没時間など飛行に影響の与える要素の確認などを行います。
ヘリコプターは飛行機と違い自動操縦ではないので夜間の飛行はできません。日没でヘリの業務は終了となります。
後は要請があった際になるスマートフォンがちゃんと鳴るかの確認などを行います。

このような確認が終わると通常の業務に戻り後は要請が来るのを待つ形になります。

日没時間から決められた出動時間が終了するとその日の振り返りのミーティングになります。
出動があればその時のことの確認を行い、何か問題はなかったかなどの確認を行います。
メンバー全員がその日の振り返りを行い、ミーティングは終了します。

ミーティングが終わった後はヘリの片付けを行ってその日の業務は終了となります。

ドクターヘリの出動について

まずは突然の着信

通常の業務を行なっている突然、ドクターヘリ用のスマートフォンに着信が来ます。
着信があるとドクターヘリのメンバーは急いでヘリポートに向かいます。
僕の研修病院のヘリポートは屋上にあるため一つのエレベーターがドクターヘリ用となり待機していてくれます。
そしてそのままエンジンのかかっているヘリコプターに乗り込みすぐに発進します。

ここで一つポイントですが要請来てドクターヘリに乗り込んだ時点ではまだどこに行くか、どのような症例なのかをドクター、ナースは知らない状態です。ドクターヘリに乗り込み、発進してから最初の報告を受けます。この報告の確認がとにかく緊張の瞬間ですね。

最初の報告では症例に関しては本当に簡単な内容のみです。〜歳、男性、胸痛みたいな感じです。
ここはどちらかといえばヘリコプターの着陸地点の確認がメインです。

現場が近づくと意識レベル、バイタルなどいわゆる二報を確認します。
ここである程度患者さんの状態を確認すると医療スタッフで現場についてから何を行うか、何を準備しておくかの確認をドクターを中心に確認します。看護師さんは補液の準備なども行います。

現場到着

ドクターヘリは基本的に現場には直接行きません。
競技場などの広い場所(いわゆるランデブーポイント)に着陸します。そしてその競技場などの場所に救急車が患者さんを乗せて待機しておりその救急車の中で患者さんを診察することになります。(もちろん離島に行く場合などは別です。)

そして介入が必要なことがあればここで行います。点滴をとったりエコーを行ったり心電図を見たりなどいろいろありますね。
ドクターヘリの中では気管挿管くらいであれば可能ですが、それ以外の手技は基本的にできません。シートベルトをしていますし、患者さんの頭部以外は基本的に届きません。そのため現場で必要な手技は行うのが重要です。
また、患者さんの対応を行うと同時にその患者さんを送る病院を選びます。

現場出発

患者さんの初期対応が終わると患者さんをドクターヘリに乗せて選定した病院へ向かいます。
ここは患者さんのバイタルを見ながら送るだけですね。機内でできることは少ないです。

到着した後は病院の医師に患者さんを引き継ぎ、病院に帰ります。
場合によっては給油してから帰ったりもあります。
病院に戻るとまた次の呼び出しを待つような形ですね。

経験した症例

僕が実際に経験した症例はバイタルの安定している外傷の患者さんと胸痛の患者さんでした。

外傷の患者さんに関しては下肢の開放骨折がありましたがバイタルは落ち着いており、現場ではバイタルの確認、FASTなどを行って近くの病院に搬送しました。

胸痛の患者さんは現場で心電図をとり、循環器の症例を多く診ている病院に搬送となりました。
心電図上はかなり心筋梗塞が疑われましたが大動脈解離の否定は現場ではできないため特に投薬はせず、酸素投与を行いながら搬送するという形になりました。

実際にイメージしていたドクターヘリと違った点

現場に行かない→行く場合ももちろんありますが、救急車が待っている陸上競技場などに向かうのがメインです。

中でできることは少ない→基本的に何かするのは現場か病院到着後で機内は挿管くらいしかできません。

飛ぶたびに給油→結構給油します。仕方ないですね。

日中しか飛べない→当然のことですがなんとなく夜も飛べると思っていました。明るい時間だけの勤務です。

実際にドクターヘリに乗ってみた感想

まずはこれを経験すると誰もが救急医に憧れるなと思いました。
とにかく、かっこいいです。
突然コールがあり、走ってドクターヘリに乗り込み、すぐに離陸、現場で初期対応。ドラマで見たような姿でした笑。

乗れる人数が5人と少なく、医者1人、看護師1人で患者対応を行わなくてはいけないためかなりの経験値も必要だと思いました。
今回僕はモニターをつけたりなど簡単なことを手伝うような形でしたがそんな単純なことでも緊張感がありました。

ドクターヘリに乗って救急科志望の医学部生は必ずドクターヘリがある研修病院を選んだ方がいいと思いました。

もちろんドクターヘリは救急科の仕事のごく一部であり、ベテランになっても1ヶ月に数回しか乗る回数は回ってこないはずです。ただそれだけであってもかなり魅力的な仕事だと思いました。

ドクターヘリを導入している病院はあまりない(1都道府県に1つ程度)のでぜひ研修病院選びの参考にしてみてください。

研修病院の選び方はこの記事にも書いているので参考にしてみて下さい。

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